白内障目薬の主な種類とその仕組み

現在、白内障の点眼薬として知られているのは、承認薬、非承認薬を含めて、主なものは次の4つです。

 

主成分 仕組み概要
ピレノキシン 水晶体の混濁は,可溶性蛋白が,トリプトファンやチロシンなどの代謝異常で生じたベンツキノンカルボン酸などの結合によって,不溶性蛋白の凝集のために生ずるが、ピレノキシレンを,この結合と競合させることで,蛋白の不溶化を阻止する.
グルタチオン 加齢や白内障により不足する、本来水晶体に含まれている還元型グルタチオンを補充,過酸化反応を抑制することで白内障の進行を防止する。
Nアセチルカルノシン N-アセチルカルノシンは白内障発生に関与するラジカルの除去を助け、また、放出されるカルノシンが、白内障の原因である水晶体のタンパク質とアスコルビン酸塩との架橋を切断することで、水晶体を透明化する。
ラノステロール 「ラノステロール」は人間の体の中にある物質で、コレステロールなどの材料になる。このラノステロールには水晶体がにごる原因になっている、たんぱく質の固まりをほどく作用があることが分かった。

 

 

ピレノキシン系目薬の働き

ピレノキシン Pirenoxine
C16H8N2O5:308.25
1-Hydroxy-5-oxo-5H-pyrido[3,2-a]phenoxazine-3-carboxylic acid
第十七改正日本薬局方より引用)

 

 ピレノキシンの働きは、白内障の原因の不溶性タンパクの凝集を起こす結合と競合させて、その結合を妨げ、白内障を起こりにくくするものです。
この働きを利用した目薬は、千寿製薬のカタリン(ヒト用)とそれをイヌ用に転用した、ライトクリーンや、カリーユニ(参天製薬)(ヒト用)があります。

 

カタリン(ヒト用)(千寿製薬)
ライトクリーン(イヌ用)(千寿製薬)
カリーユニ(参天製薬)(ヒト用)
ニット―(日東メディック)(ヒト用)

 

 主要文献は、下記の荻野氏の論文ですが、60年以上も前のものでエビデンスがないとの議論がありますが、白内障の承認薬はほぼこれだけ、と言ってもいいくらいなので、未だに白内障の目薬と言えば、ピレノキシン系目薬、というほどのメジャーな目薬です。
 犬用に関しては、承認薬はライトクリーンのみであり、動物病院で犬が白内障と診断されると処方されるのが、まずこの目薬です。

 

 ピレノキシン系目薬は、商品が謳っている通り、白内障の進行防止の薬効しかなく、白内障が改善することは望めません。

 

<参考文献>
・荻野周三:日本眼科学会雑誌, 59, 666, 1955.
・荻野周三:日本医事新報, 第1732号, 13, 1957.
・荻野周三:臨床眼科, 11, 272, 1957.
・Kociecki J, Za?ecki K, Wasiewicz-Rager J, Pecold K. Evaluation of effectiveness of Catalin eyedrops in patients with presenile and senile cataract. Klin Oczna. 2004;106(6):778-82. Polish.

 

 

グルタチオン系目薬の働き

グルタチオン Glutathione
C10H17N3O6S:307.32
(2S)-2-Amino-4-[1-(carboxymethyl)carbamoyl-(2R)-2-sulfanylethylcarbamoyl]butanoic acid
第十七改正日本薬局方より引用)

 

グルタチオンの働きは、加齢や白内障により不足する、本来水晶体に含まれている還元型グルタチオンを補充,過酸化反応を抑制することで白内障の進行を防止します。抗酸化作用です。商品としては、タチオン(長生堂製薬)があります。

 

タチオン(長生堂製薬)

 

グルタチオン系目薬の効能も、ピレノキシン系目薬と同レベルということで、白内障の進行防止程度のようです。承認薬です。犬専用のグルタチオン系目薬は発売されていないようです。

 

<参考文献>
・ 増田寛次郎: 日本眼科学会誌79(7)800, 1975
・ 戸張幾生 他: 眼科臨床医報76(11)1779, 1982
・ 河原哲夫 他: あたらしい眼科1(6)864, 1984
・ 早石 修 他: グルタチオン研究の進歩. 診断と治療社:
・ 小口昌美 他: 日本眼科学会誌66(12)1488, 1962
・ 赤羽純生: 日本医科大学雑誌33(2)86, 1966
・ 内山幸昌: 日眼会誌70(9)1118, 1966[TA-0235]
・ 宮田昭男: 日本眼科学会誌72(11)2307, 1968
・ 弓削経夫: 日本眼科学会誌66(11)1135, 1962
・ 堀内淳一 他: 日本医学放射線学会雑誌27(3)265, 1967
・ 本多捷郎: 臨床眼科25(1)101, 1971[TA-0231]
・ 塩崎英一: 臨床眼科21(2)111, 1967[TA-0230]
・ 関  公: 日本眼科学会誌

 

 

Nアセチルカルノシン系目薬の働き

N-アセチルカルノシン
N-Acetylcarnosine
C11H16N4O4
(2S,5S)-5-amino-2-acetamido-3-(1H-imidazol-4-yl)-4-oxohexanoic acid

 

J-Globalより引用)

 

N-アセチルカルノシンの働きは、白内障発生に関与するラジカルの除去を助け、また、放出されるカルノシンが、白内障の原因である水晶体のタンパク質とアスコルビン酸塩との架橋を切断することで、水晶体を透明化するというものです。

 

キャンシー(can-c)(プロファウンド
シーナック(c-nac)(インタスファーマ
クララスティル(ブルシェッチーニ・エスアールエル

 

ピレノキシン系やグルタチオン系目薬では、白内障の原因となる物質が、白濁化するのを防止する働きだけなのに対して、Nアセチルカルノシン系目薬では、白内障の防止もですが、白濁化しているものを透明化する働きがあると主張しています。また、Nアセチルカルノシン系目薬は、非承認(ヒト、動物用とも)であることに注意してください。
また、後期の白内障については改善の効果が出にくいようです。(下記の文献(3つ目)での報告、実レビューでも例があります)

 

<参考文献>
・Mark A Babizhayev,Leslie Burke etal,Clinical Interventions in Aging 4(1):31-50 ・ February 2009. N-Acetylcarnosine sustained drug delivery eye drops to control the signs of ageless vision.
・Mark A Babizhayev,Current Drug Therapy 100(1) ・ January 2006. Revival of the Lens Transparency with N-Acetylcarnosine
・David Williams, Veterinary Ophthalmology 9(5):311-6 ・ September 2006. The effect of a topical antioxidant formulation including N-acetyl carnosine on canine cataract: A preliminary study

 

 

ラノステロール系目薬の働き

ラノステロール

ラノステロール
lanosterol
C30H50O
ラノスタ-8,24-ジエン-3-オール。

 

ウィキペディアより引用)

 

白内障の新薬として、アキュセラ社が、大塚製薬と提携、共同研究が行われ、大変注目されたのですが、現在では提携は解消された模様。うまくいかなかったようです。
ラノステロールは白内障でのタンパク質凝集を解消する、として、Nature誌にも取上げられたようです。

 

 

アキュセラ社は、うまくいかなかったようですが、上記の「Lumen Pro」と「LANOMAX」という商品がすでに目薬が販売されていて驚きです。Lumen Proは、ラノステロールとNアセチルカルノシンのハイブリッドタイプの目薬です。

 

 

<参考文献>
日経新聞2016/5/24
・Nature523:607-611, 2015 → abstract